MUSIC

2012.02.10 (Fri)
これもブルース 第21回 「キング・オブ・ブギー!」
John Lee Hooker


Boom Boom/John Lee Hooker

「Boom Boom Boom Boom !」と始まるこの曲。いろんな人がカヴァーしているので聴いたことがある人も多いんじゃないかな。オレも一番最初に聴いたのはイギリスのバンド、The Animalsのヴァージョンだった。「Shake It Baby!」というコーラスが入っていて、ちょっとポップな感じになっているので、違う曲に聴こえなくもないが、、、(ちなみにこのバンドでベースを弾いているChas Chandlerは、のちにJimi Hendrixを見つけてイギリスでデビューさせたことで知られている)。それからかなりの年月が経って、伊藤銀次氏にTony Joe Whiteの「Boom Boom」を教えてもらうのだが、これがめちゃめちゃカッコイイ!ビート感が原曲とは違っているのもあり、最初、同じ曲とは思えなかった。Tony Joe Whiteの声にもピタリとはまっていて見事なカヴァーだ!

John Lee Hookerは1948年に初レコーディングしてから2001年に亡くなるまでのキャリアの中で、本当にたくさんのレコードを吹き込んでいる。その時々のレコードレーベルによって、弾き語りだったり、バンド編成だったり、アコースティックだったり、エレキを弾いてたり、とスタイルはさまざまなんだがどれもJohn Lee Hookerなのは間違いない。

-Burnin'-


上記の大ヒット曲「Boom Boom」が収録されている、1962年Vee Jayからリリースされたアルバム。初めてJohn Lee Hookerを聴くという人にはおすすめのアルバムだ。デトロイトで活動していたのもあり、バックを務めるミュージシャンは、おそらくあのMotown Recordsの面々。そんなとこも親しみやすく、興味深いアルバム。M-12の「What Do You Say」のメロディがHowlin’ Wolfな感じもとても興味深い。

-I'm John Lee Hooker-


「Burnin'」から遡ること3年。1959年にVee JayからリリースされたJohn Lee Hooker、初のアルバム!1曲目の「Dimples」はThe Spencer Davis Groupというか、Steve Winwoodが取り上げたことでも有名。他にも大ヒット曲の「Boogie Chillun」や「Hobo Blues」、「I'm So Exited」、「I'm In The Mood」など聴きどころ満載!M13〜M18はCD化の際に追加収録されたとのこと。録音は1955~1959年のセッションのようだ。小出斉氏のライナーノーツも最高なので是非とも読んでもらいたい。

-On Campus-


1963年、Vee Jayからリリースされたアルバム。M-1〜7までがホーンも含むバンド編成。しかもコーラスで参加しているのが「Heatwave」でブレイク直前のThe Vandellasだというから驚きだ!M-8〜12がJohn Lee Hookerの歌とギターにドラムのみ、という両極端なアルバム。1曲目の「I'm Leaving」は文句のつけようのないカッコよさ!!!他にもVan MorrisonがThem時代にすでに取り上げていた「Don't Look Back」、軽快なテンポにThe Vandellasのコーラスが小気味良い「I Want To Shout」、ドラムのみをバックにブギが爆発する「I Want To Ramble」など、見所満載の好アルバム!

-THE BEST OF FRIENDS-


タイトルからわかるように1989年の「The Healer」、1991年の「Mr. Lucky」、1992年の「Boom Boom」、1995年の「Chill Out」、1997年の「Don't Look Back」からそれぞれVan Morrisonをはじめ、Ry Cooder、Nick Low、Carlos Santana、Bonnie Raitt、Ben Harper、Robert Cray、Ike Turnerと、John Lee Hookerを敬愛してやまないミュージシャンとの共演を集めたものに、新録3曲がプラスされた豪華セルフカヴァーベスト盤!!!1曲目が新録の一つ「Boogie Chillen」なんだが、これが、本当にすごい!!!クレジットをみるとEric ClaptonやJim Keltner、そしてBill Payneの名前が、、、。さすがとしか言いようのない演奏だ!!!アルバム全体の印象は晩年のJohn Lee Hookerが子供や孫達に囲まれて一緒に歌い、演奏しているような、そんな雰囲気の好編集アルバムに思える。John Lee Hookerを知りたい人はここを入り口に遡ってみるのも良いかもしれない。


「いつコードが変わるんやろう?」と思うくらい1つのコードで突っ走るのが、John Lee Hookerのスタイルとして定着している。が、そういうところが退屈すぎて、以前はあんまり聴かなかった、というか、聴けなかった。そんなオレは耳でしか聴いていなかったんだなぁ、、、。

最後にJohn Lee Hookerの名言を。

「コード・チェンジっていうのは、歌ってる自分の気持ちがチェンジするからするもんなんだ」

これもブルース。

初掲載:2008.08.29.
加筆、修正:2012.02.10.
2012.01.13 (Fri)
これもブルース 第20回 「レジェンダリー・スーパーハープ・ブルースマン!」
James Cotton

当時この連載が20回目を迎えたときに伝説のBLUES MAN、James Cottonが来日。2008年の7月11日の金曜日、六本木はミッドタウンの中にあるライヴハウス、ビルボードに行ってきた。

1935年、ミッシシッピー生まれ。担当楽器はハープ(ハーモニカのこと。ブルースマンが吹いている10穴ハーモニカを称してブルースハープという)、そして歌。ブルースハープの草分け的存在、Sonny Boy Williamson Ⅱに師事し、1956年から約10年間、Muddy Watersのバンドでハープを吹いている。その後、自身のバンドを組んで活動。1974年にアルバム「100%COTTON」を発表。

-100% COTTON-


昔、トータス氏にこのアルバムを借りたのが、James Cottonを知るきっかけになった。超絶タイトでスピード感あふれる演奏は、いま聴いても熱くなるアルバム!超名盤!!!

Rocket 88/James Cotton Blues Band



19時過ぎに会場に到着。すでに始まっているが御大James Cottonはまだ登場しておらず、バンドメンバーがスローブルースを演奏している。曲の間奏で「プイーン、プイーン」とチョーキングしながらソロを弾きまくってるのはなんとベーシストの方。さすがサービス精神旺盛だ。

そのスローブルースが終わり、いよいよ御大James Cottonの登場。軽快なシャッフルのリズムに合わせて、「Mr. Super Harp!!! Legendary!!! James Cotton!!!!!」と呼び込むと、

「パィーッン!」

といきなりハープの音。ステージ下手からハープを吹きながら登場!おぉー!体がめちゃめちゃデカいー!!!でもその巨体が「Legendary」に相応しく、強烈な存在感を放ってる!黒のハンチング帽に赤いシルク(綿ではなかった)のシャツ、パンツは黒いスラックスだった。首もとにはゴールドのネックレスにゴールドの腕時計、両手の薬指に指輪がガキーン!と光っていた。

73才という高齢を考えると、ステージに椅子が用意されているのは何も不自然には思わない。それどころか両手を振り上げてバンドに指示を出してはハープを吹き、曲が終わったと思ったらすかさず次の曲のイントロを吹き始めたり、ハープを持ってる左手を右手でバシバシ叩いたりするその姿には、終始椅子に座っていても、なにか熱いものを感じた。

ライヴも後半、「I've Got My Mojo Workin'」で客席は大盛り上がり!これにはJames Cottonも気を良くしたのか、リフレインを何度も繰り返していた。もちろんオレも大声でレスポンス。次の「Sweet Home Cicago」で本編が終了。アンコールで出てきたときに巨体を揺すりながら、ダンスというかステップを披露してくれたのだが、さすが、サービス精神が旺盛だわ!サービスといえば、ハープを縦にパクッとくわえる、師匠のSonny Boy Williamson芸もちらっとやってくれたりして、「Mr. Super Harp!!! Legendary BLUES MAN!!! James Cotton!!!!!」のライヴは終了した。

伝説の人というのは観れるだけでも本当にありがたい存在。

「椅子に座っていようが熱いライヴはできるんだ!」と言っているように見えたし、

「ライヴをやり続けることがオレのブルースなんだ!」

とも言っているようにも思った。

そんなことを感じたJames Cottonのライヴだった。

これもブルース。

初掲載:2008.08.01.
加筆、修正:2012.01.13.
2011.12.16 (Fri)
これもブルース 第19回 「叫ぶ!ロックンロール・クイーン!」
Little Richard

本名 Richard Wayne Penniman

「Rock'n'Rollの創始者」、自称「Rock'n'Roll Queen」(ちなみにKingは当然ながらElvis Presley)などLittle Richardには「Rock'n'Roll」という言葉が常に付いて回っている。オレの中での「Rock'n'Roll御三家」は第5回のBo Diddley、第17回のChuck Berry、そしてこのLittle Richard。BLUESからRock'n'Rollへの橋を架けた重要な3人だ。

Slippin' And Slidin'/Little Richard


1932年、アメリカのジョージア州で生まれたLittle Richard。祖父が牧師だったこともあり、祖父母、父親も教会で歌っていたようだ。そんな環境もあり当時のゴスペルミュージックには相当の影響を受けて育ったようだが、中でも一番のお気に入りはSister Rosetta Tharpeだったという。

Up Above My Head/Sister Rosetta Tharpe


そして歌手として一番影響を受けたのがゴスペルシンガーのMarion Williams。Little Richardのトレードマークともいえる「whoooo!!!」というボーカルスタイルはまさにこの映像で確認できる!

Packin' Up/Marion Williams


-Hail! Hail! Rock'n'Roll-


Chuck Berryの「Hail! Hail! Rock'n'Roll」4枚組のコンプリートDVDに収録されているBo Diddley、Chuck Berry、Little Richardからなる3者対談完全版によると「Muddy Watersが大好きでよく観に行っていた。Elmore Jamesも、Sonny Boy Williamsonも、Little Walterもよく観に行っていた!」と言うLittle Richardの言葉からも、ゴスペルシンガーだけではなく、ブルースマンからも相当な影響を受けていたのがよくわかる。

-Here's Little Richard-


1957年、Specialty Recordからリリースされた記念すべき1stアルバム。「ワッパラルッバッバランバンバン!」と「Tutti Frutti」で幕を開けるのだが、これは何度聴いても興奮してしまう!他にもPaul McCartnyがThe Beatles時代に取り上げたことでもよく知られる「Long Tall Sally」、KIng Of Rock'n'Roll、Elvis Preselyも取り上げた「Ready Teddy」「Rip It Up」、そして冒頭に挙げたJohn Lennonのカヴァーでも有名な「Slippin' And Slidin'」などなど、、、「Rock'n'Roll」の超名盤がこのアルバムだ!バックを固めるのはNew Orleansのミュージシャン達。このセッションでドラムを叩いているのが「バック・ビートを叩いたドラマー!」で有名なEarl Palmerだ!そんな意味でもこのアルバムこそいまの時代に聴いてほしい。

Bo Diddley、Chuck Berryらと共に、BLUESからRock'n'Rollへの架け橋を作ったLittle Richard。

最後にLittle Richardが対談で言っていた言葉を。


「Rock'n'RollはアップテンポなRhythm&Blues。それとBoogie Woogie!!!」



これもブルース。


初掲載:2008.07.18.
加筆、修正:2011.12.16.
2011.11.15 (Tue)
これもブルース 第18回 「悪魔と取り引きしたブルースマン!」
Robert Johnson

どこで名前を知ったのか?いま思うとはっきりと思い出せない。

「BLUESといえばRobert Johnson!Robert Johnsonを知らずにBLUESを語るなかれ!」

というような言葉が、音楽雑誌のインタビューに載っていたのか、はたまたレコードのライナーノーツだったのか、友達の一言だったのか、なんせ「Robert Johnson」の名前がインプットされたのはちょうど高校を卒業した頃だった。その一言を真に受けて大阪梅田のエストワンというショッピングモールのはずれにあったレコードショップ、ワルツ堂(なつかしい!)に行き、探し当てたのが「KING OF THE DELTA BLUES SINGERS」というレコードだった。

-King Of The Delta Blues Singers-


いかにも怪しげなジャケットなんだが、いろんな本やらインタビューを読んでいるとこのアルバムが発売されたのは1961年とのこと。Keith RichrdsもEric Craptonもこのレコードを聴いてRobert Johnsonを知ったということだった。なぜアルバムジャケットがイラストなのかというと当時はまだRobert Johnsonの写真が存在しなかった、あるいは発見されたが本人ではなかったということがあり、このイラストになったものと思われる。なんせ悪魔との取引で自分の魂と引き換えに、高度なギター奏法、歌唱法を手に入れたという伝説は有名な話しだ。そんな伝説のブルースマンが歌うブルースは、当時18、19才のオレには全然、全くと言っていいほど受け入れられなかった。が、手放さずに持っていたのにはなにか縁があったのだと思いたい。全ての音楽ファンにRobert Johnsonが受け入れられることは間違いなく無いのだが「何かが必要だ」と思っている人には是非とも聴いてみてほしい。

-The Complete Recordings-


このレコードにはRobert Johnsonが吹き込んだ全てのセッション、1936年11月23日、26日、27日、1937年6月19日、20日の計5回、全29曲、41テイクが収められている。このジャケットに使われている写真が発見されたのが1989年のこと。1938年に毒殺されて以来、約50年の歳月が経ちアナログレコードではなくCDとして、自身の写真とともに蘇ったRobert Johnson。27才という若さで亡くなった男の生きざまがその全楽曲とともに詳細なライナーノーツにも記載されているので、そちらも是非とも参照してもらいたい。

とは言えど、もうちょっとわかりやすいのが聴きたいという方にはこちらを。

-Let It Breed/The Rolling Stones-


1969年にリリースされたThe Rolling Stonesの傑作アルバム。Brian Jonesがこのアルバムレコーディング中に脱退するなど、The Rolling Stonesの歴史の中でも激動の頃の1枚。M-2/Love In Vain (むなしき愛)はRobert Johnsonのカヴァー。

-Wheels Of Fire/Cream-


1968年にリリースされたCreamのアルバム。Disk2のM-1/Crossroads Blues (四辻ブルース) はRobert Johnsonのカヴァー。大ヒット曲「White Room」が収録されているアルバム。

-More Real Folk Blues/Muddy Waters-


M-6/Kind Hearted WomanはRobert Johnsonのカヴァー。

-憂歌団/憂歌団-


M-9/カインド・ハーテッド・ウーマンをカヴァーしている。演奏は上のMuddy Watersヴァージョンが下敷きに。憂歌団のみなさん、さすがです。


これもブルース。


初掲載:2008.07.04.
加筆、修正:2011.11.15.
2011.10.14 (Fri)
これもブルース 第17回 「ベートーベンをぶっ飛ばしたギターマン!」
Chuck Berry

本名 Charles Edward Anderson Berry


「Chuck Berry=Rock'n'Roll」と言い切ってしまってもこの人なら何の問題もないだろう。「Chuck Berryって誰?」ってそんな人はいないと思うが、万が一そんな人がいたとしても「Johnny B. Goode」という曲なら知らない人はいないだろう。最近はなかなか演奏する機会が減ってしまったが、アンコールセッションでの定番曲といえばこの曲だった。



The Beatlesがカヴァーしていた「Roll Over Beethoven」「Rock’n’Roll Music」や、The Rolling Stonesがカヴァーしていた「Carol」「Around And Around」、The Kinksのファーストアルバムに収録されていた「Beautiful Delilah」「Too Much Monkey Business」などなど、上げればきりがないほどいろんな人に歌われ演奏されているChuck Berryの曲達。オレもそんなバンドが取り上げたカヴァーを先に知ったのだが、オリジナルの演奏もChess Recordsの凄腕のブルースマンたちがバックを務めているのもあって、いまだに色あせていない。

-The Great 28-


オレが持っているChuck Berryのレコードはこのベスト盤のみ。
ピアノのJohnny Jonson、ドラムのFred Below、ベースはおそらくWillie Dixsonだろう。なかなかこんな演奏はできたもんじゃない。 ベスト盤なので当たり前なのだが、Chuck Berryの代表曲が目白押し。

-Hail! Hail! Rock'n'Roll-


1987年に公開されたChuck Berryの還暦を祝った映画「Hail! Hail! Rock'n'Roll」のDVDが2007年ようやくリリースされた。このDVD化を心待ちにしていたRock'n'Rollファンはかなり多かったんじゃないかな。もちろんオレもその中の一人。しかも通常盤とは別のコレクターズエディションなる仕様はなんとDVD4枚組!これには参った!この映画はThe Rolling StonesのKeith Richardsが音楽監督を務めているのだが、観終わった後、Keith Richardsのことが好きになっているのはRock'n'Rollのマジックなんだろうか。素晴らしい音楽映画だ!

現在もギター片手に世界を飛び回っているChuck Berryは84歳。

見習いたいもんだ。

これもブルース。

初掲載:2008.06.06.
加筆、修正:2011.10.14.

2011.10.03 (Mon)
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