MUSIC

2010.09.24 (Fri)
ハート・オブ・ロックンロール 第5回「ワイルド・サイドから帰ってきたロックンローラー!」

Lou Reed ルー・リード

高校に入ってから、兄や新しい友達の影響でいろんな音楽を聴くようになった頃、友達に録音してもらったのが「The Velvet Underground & Nico」(通称「バナナ」)だった。1曲目の「Sunday Morning」の親しみやすいメロディから、David Bowieもカヴァーしていた「I’m Waiting For The Man」へと、いままでに聴いたことのない音の世界に導かれて良く聴いたのを思い出す。しかしながら高校生のオレには「Heroin」と「European Son」の2曲は刺激が強すぎたので、当時はあまり聴いていなかった。

-The Velvet Underground & Nico-

いまでも良く見かけると思われるこのアルバムジャケット。このバナナはシールになっていて、はがすとバナナの中身の絵が出てくるようになっている。なんともすごい仕掛けだ。このジャケットをデザインしたのはバナナの下にデカデカと名前が載っている「Andy Warhol」という芸術家。The Rolling Stonesのアルバム「Sticky Fingers」のジャケットもこの人のデザインだ。

-Transformer-

Lou Reedというソロ名義になってからはたくさんのアルバムがリリースされているが、中でも忘れられないのはこの2作目の「Transformer」だ。プロデューサーにDavid Bowieを迎えて作られたこのアルバムは、ヒット曲「ワイルドサイドを歩け(Walk On The Wild Side)」が収録されているのもあって、発売当時は大ヒットしたようだ。オレが最初に聴いたLou Reedもこのアルバムだった。いま聴いても思うことは、まず歌のバランスがデカイ!ははは!かなりの音量でLou Reedの声が飛び出してくるのだが、それがなんとも気持ちがいい!「Satellite Of Love」や「Perfect Day」など名曲がたくさん入ってる超名盤!!!

けっこうボソボソと歌うというか、しゃべるというか、Lou Reedの歌はとても独特な歌い方だと思う。声にもすごく特徴があって、「あ、Lou Reed!」とすぐにわかる。同性愛やドラッグ、ときには破滅的で暴力的なステージング、とまぁ実にさまざまな生き方をしてきたLou Reed。歌が上手とかうまくないとか、そんなことはどうでも良くなるくらい、いつの時代のアルバムにもLou Reedの歌の中に何か熱いものを感じてしまう。うまく言えないけど、オレがLou Reedの音楽を好きなところはそういうところだと思う。


Lou Reedには「Rock’n’Roll Heart」という曲があるのだが、この連載のタイトルを考えているときに浮かんだのがこの曲のタイトルだった。で、その時にNeil Youngの「Heart Of Gold」が偶然流れていたのもあって、「Heart」つながりでこの連載のタイトルになった。Neil Youngもいつか取り上げたいなぁ。

-Rock’n’Roll Heart-


これがその曲が入っているアルバム。タイトルもそのままのRock’n’Roll Heart。あまり売れなかったアルバムのようだがタイトル曲の熱さが好きだ!

今回紹介した以外にも、The Velvet Underground時代の3枚目のアルバム「The Velvet Underground」やソロになってからの「Blue Mask」や「New York」、「Set The Twilight Reeling」など、名盤がたくさんあるので興味のある方は是非!


初掲載:2009.01.23.
加筆・修正:2010.9.24.

2010.09.10 (Fri)
これもブルース 第5回 「ウエスト・サイド・ブギー」
Magic Sam
マジック・サム



ある日の会話。

サンコンJr.「松本君、マジック・サムのあれっていいのん?」

トータス松本「ん!?あれって、どれ?」

サ「あの、ほら、『ブラック・マジック』やなくて、、、なんやったっかな、、、タイトルがわからんなぁ。」

ト「、、、。」

サ「ほら、ジャケットがサイケデリックな感じのあるじゃないですか。」

ト「、、、あぁ、『ウエスト・サイド・ソウル』かー!」

サ「そう!それ、それ!」

ト「あれ、すーんごいええよ!マジック・サムの中で一番好きやわ。」

ジョン・B・チョッパー「あれ、ええよ。全体がすごい明るくて、なんかカラっとしてる。」

サ「そうなんや。」

ジ「サンコン持ってないん?」

サ「うん、持ってないんよ。」

ジ「じゃあ、今度、貸したげるわ。」

という会話はつい最近の話(連載当時)。

-West Side Soul-


Magic Samのアルバム「West Side Soul」は本当にすばらしい。アルバム全体からは、ブルースというよりもソウル・ミュージックやリズム&ブルースの匂いを強く感じる。この人のギターもやはり爆発してるのだが、第1回のElmore Jamesのような爆発感とはちょと違っていて、もっと都会的というか、かなり洗練されているように聴こえる。「Feel So Good」のリズムギターの感じなんか、「グッツグッツグッツグッツ」とマグマの噴火直前のような、そんなことを想像してしまうのはオレだけだろうか。

ギターの一音一音がギラギラしてて、あまり訛っていないのが都会的に聴こえるのだろう。だからといって、あっさりしている訳でもなく、切れ味がするどいと言うとわかりやすいだろうか。そう、「切れ味がするどい」ということは、やはりリズムがすごく際立っているということだと思う。刀で「スパッ!」と斬られてる、そんな風に感じてしまう。Magic Samの歌声はいい意味でドスが利いていなく、カラッと乾いた声をしていて、ブルースによくある湿り気はあんまり感じない。そこにMagic Samという人の「憂い」がプラスされてこの人のブルースになるのだろう。興味のあるかたは是非とも聴いてみて欲しい。


高校生の頃、ソウル・ミュージックやリズム&ブルースに興味を持ち始めたのと同じように、「ブルース」という音楽にも普通に興味を持った。当時、The Rolling Stonesのライナーノーツで「Muddy Waters」という名前を覚えたように、「Magic Sam」という名前も何かの本で覚えていた。そんなある日、大阪のミナミ(心斎橋周辺)にあった「吉村レコード」という、ブルース、リズム&ブルース、ソウル・ミュージック専門のレコード屋さんを見つけて、おそるおそる入ってみたが、スタンダードなレコードからマニアックなものまで、ちょっと圧倒されるくらいの品揃えで、高校生の自分には相応しくないのがわかり、思わず「しまった!」と声を出しそうになったのだが、いま思うと、とても貴重なお店だった。

このお店はおもしろいところがあって、有名なアルバムや店長さんおすすめのアルバムには、プライスカードに「あるうちに買っときや!」とか、「もってな恥!」 というスタンプが押されていて、Magic Samのアルバム「West Side Soul」には「もってな恥!」のスタンプが押されていたような気がする。しかし、なぜかオレが手に取ったのは、なんのスタンプも押されていない、Magic Samがコブラ・レーベル時代にリリースされた「All Your Love」というマニアックなアルバムだった。

-All Your Love-


これはかなり通好みのアルバムだ。「West Side Soul」や「Black Magic」を聴いて、さらに、Magic Samを知りたい!という人が買うアルバムなんだと思う。が、なぜか、オレは最初に買ってしまった、、、。いま思うと、店長さんの言うことを素直に聞いて、「West Side Soul」をつかんでいたら、もっと早く、自分なりに「ブルース」に親しんでいたかもしれない。

何事も最初に感じる印象はとても大事ということか。

これもブルース。

初掲載:2007.12.14.
加筆、修正:2010.09.10.
2010.09.01 (Wed)
Jose Feliciano ホセ・フェリシアノ

Jose Feliciano
ホセ・フェリシアノ


おそらくこの名前を聞いて「!」となる人は、そんなに多くはいないだろう。プエルトリコ出身のシンガー兼ギタリスト。緑内障のため目はほとんど見えない。しかしながらこの人が弾くスパニッシュ・ギターと、ソウルフルでエネルギーに満ちあふれる歌声には、いまだに心をわしづかみにされる。

そんなJose Felicianoに出会ったのは、たしか12~3年前くらいだった。渋谷の中古レコード屋さんを巡り、「新入荷」の棚を端から端まで見ていたときにふと、目に留まったジャケットがこれだった。

-That The Spirit Needs-


なんともカッコイイこのジャケット。値段も1000円するかしないかだったので、「失敗してもいいや」ぐらいの気持ちでレジへ。 家に帰り、針を落として歌が聴こえてきた瞬間、「!」となったのをいまでも覚えている。 俗に言う「ジャケ買い」(CDやレコードのジャケットから、その中身の音楽を想像して買うという、とてもリスクの高いレコードの買い方)で成功した数少ない例だ。一時期、車のCMで流れていた、Cat Stevensの「Wild World」のカヴァーが収録されているのもこのアルバム。 現在CDで発売されているものはジャケットが違うので、興味のある方にはアルバムタイトルで探すことを勧めたい。

当時のクラブシーンでJose Felicianoが歌う、Stevie Wonderの「Golden Lady」のカヴァーが大ヒット(そういう言い方はおかしいのかな?)していたのも、たくさんアルバムが出ていることも全く知らず、事務所にいた音楽通の人にいろいろと教えてもらった。現在「Golden Lady」の収録されたアルバムが手元にないので、その他のアルバムを今回は紹介しよう。

-Feliciano!-


1968年にリリースされた大ヒットアルバム。The Doorsの「Light My Fire」や、The Beatlesの「In My Life」、The Mamas & The Papasの「California Dreamin'」、Bobby Hebbの「Sunny」など、ほとんどの曲がカヴァー曲で構成されている。このアルバムが一番好きという人もけっこう多く、いまだに人気の高いアルバムだ。

-Just Wanna Rock 'N' Roll-

1975年リリースのこのアルバム。このジャケットをジャケ買いする勇気は、残念ながらオレにはない。しかしながらこのアルバムに収録されているThe Temptationsのカヴァー「I Can't Get Next To You」や、Jose Felicianoのスパニッシュ・ギターが炸裂するインストゥルメンタル曲「Affirmation」は是非とも聴いてみて欲しい!近年、ようやくCD化されたようで嬉しい限りだ。

今回紹介できなかった「Golden Lady」が収録されているアルバム「And The Feeling's Good」や、Steve Cropperプロデュースの「Memphis Menu」、「Compartments」、「From My Love...Mother Music」など、名盤が多く残されているので、機会があれば聴いてみて欲しい。きっとJose Felicianoのことを好きな人は多いと思う。


2010.09.01.
1