第3回「転がり続ける白い石達のギターリスト!」
言わずと知れたThe Rolling Stonesのギターリスト。1943年12月生まれなので、ちょうど65才になったところ(連載当時)。Martin Scorsese監督の映画「Shine A Light」も封切られて盛り上がっている(こちらも連載当時)のだが、知れば知るほど好きになっていくThe Rolling Stonesの魅力とはいったいなんなんだろうか?「ミック・ジャガーの声が好き!」という人もいれば、「単純に楽曲がいい!」という人もいると思う。メンバーそれぞれのキャラクターが輝いているのも魅力の一つだろう。今回は1988年と1992年にリリースされたKeith Richardsのソロアルバムに、その魅力のヒントを探してみよう。
Keith Richardsの初ソロアルバムが発表されたのは今から22年前、1988年のこと。The Rolling Stonesの活動で言うと、アルバム「Dirty Work」と「Steel Wheels」の間にリリースされている。俗に良く言われる「ミック、キース不仲説」が最高潮のころだ。
そのKeith Richardsの初ソロアルバムのバックをつとめるメンバーがこれまた強力で、Chuck Berryの映画「Hail! Hail! Rock'n'Roll」で共演したメンバー(前回のNRBQのベーシスト、Joey Spampinatoも参加している!)と、X-pensive Winos(エクスペンシヴ・ワイノス)というKeith Richardsのソロプロジェクトバンドががっちりと支えていて、すばらしい演奏が繰り広げられている。ドラマーで共同プロデューサーのSteve Jordanは「Hail! Hail! Rock'n'Roll」はもちろんのこと、The Rolling Stonesのアルバム「Dirty Work」にもクレジットがあるので、どうもその辺からKeith Richardsとの親好が深まっていたようだ。
-Talk Is Cheap-
88年にリリースされた初ソロアルバム。1曲目の「Big Enough」からもう大爆発の連続!!!ちなみに1曲目のこの曲のベースを弾いているのは、The J.B.'sでおなじみの、William "Bootsy" Collinsだ(ちなみにSaxはMaceo Parker!)。発表された当時、オレの周りで聴いている人もいたが、その頃は全くと言っていいほど、このアルバムには興味がなかった。あぁ、その頃から聴いていれば、、、。ロックンロールやソウル・ミュージック、ファンク・ミュージック、レゲエに至るまで、リズムの見本、お手本といった曲がたくさん収録されている名盤だ!!
-Main Offender-
92年にリリースされたこのセカンド・ソロアルバムも同様、バックを務めるのは共同プロデュースのSteve Jordanをはじめ、X-pensive Winosのメンバーだ。こちらは前作の「Talk Is Cheap」からさらに踏み込んだと言ったら良いだろうか、なんせ前作に引き続き、怒濤の「ノリ」が続いて行く名盤だ!
この2枚のソロアルバムには、なんとも気持ちのいい「すきま」があり、それを感じることができる。
こんなKeith Richardsのインタヴューがあった。
「キャンバスだよ。音のない部分。もし画家だったら、キャンバスを使うだろう?それで絵を描くとして、まぁ、そこここに筆をつけるだろう?でもほとんどの有名な絵は決してキャンバスを全部使ってないよ。それでそのビジュアルを"音"に置き換えてみれば同じことだ。音のしない部分がキャンバスなんだ。だから何もしない"ところ"が同じように重要で、さらにもっというと、なにかをするところが"どこ"かってことだよ。(中略)それがロックンロールだよ。」(リットーミュージック Steve Jordan / The Pocket より)
このインタヴューを読むとソロアルバムでの「すきま」やKeith Richardsが何を重要視しているかがわかるように思う。The Rolling StonesにはThe Rolling Stonesにしかない気持ちのいい「すきま」があって、それがいつまでも心をとらえて離さない魅力の一つだとオレは思う。
初掲載:2008.12.19.
加筆、修正:2010.07.23.
本名 McKinley Morganfield
おそらく、初めてオレが耳にしたブルースマンの名前が、このMuddy Watersだ。直訳すると「泥水」なんだが、「どろみず」って、、、。もちろんこれは本名ではなくニックネーム。本名は、McKinley Morganfield。子供の頃、泥んこになって遊んでたから、こう呼ばれるようになったとか。そういえば、ブルースマンの名前はニックネームの人がやたらと多い。Howlin WolfやBo Diddley、Junior Wellsもそうだ。Slim Harpoって名前の人もいるなぁ。そういうオレもサンコンJr.と名乗っているのだが、、、。ちなみに小学校のときのニックネームは「サコジョウ」だった。まぁ、そんな話は置いといて、、、。
Muddy Watersを知ったのは、当然ながらというか、やっぱりThe Rolling Stonesのおかげだった。彼らのファーストアルバムに「I Just Want To Make Love To You」(邦題「恋をしようよ」)という曲が入っていて、ライナーノーツを読んでいると、「この曲は1954年にR&Bチャートでベスト5に、、、、、。」とあり、そこに書かれていた名前がMuddy Watersだった。
さぞや原曲もすごいことになっているに違いない!と勝手な期待に胸ふくらませ、レンタルレコードショップ(当時はまだCDはなかったので、LPレコードを貸してくれるお店が普通だった)に足を運んだ。「The Best Of Muddy Waters」を借りて、家に帰り、1曲目に収録されていた「I Just Want To Make Love To You」に針を落とすと、聴こえてきたのは思いもしていなかった音楽だった。「えぇー!なにこれ?」っていうくらい、The Rolling Stonesのカヴァーとは対照的で、全く好きになれなかった。The Rolling Stonesの超攻撃的でスピード感バリバリなアレンジに対し、Muddy Watersの原曲は、かなりゆったりとしていて、メチャメチャ渋いアレンジ。今聴くと、もちろんカッコイイのだが、その「渋さ」は当時の血気盛んなオレには楽しめるはずもなく、「ブルース」という音楽へ目に見えない壁を作ってしまう。
-The Best Of Muddy Waters-
この妖しく浮かび上がるMuddy Watersの顔!The Rolling Stonesのバンド名にもなった「Rollin' Stone」、名曲「I Can't Be Satisfied」、「I'm Ready」など、Chess時代の代表曲がギュっと詰まっている。まぁ、ベストなんで当然と言えば当然か。現在はボーナストラックが追加されたものが発売されている。
そんな、若造だったオレも20才年をとって、今またMuddy Watersを聴いている。しゃべるように歌い、話すようにギターを弾いているMuddy Waters。いや、歌うようにしゃべってるのかなぁ。とてもかっこいい。また、Muddy Watersのバンドがすごいんだ!何十年も前に録音された音楽に、こんなにもワクワクしたりドキドキするのは、やっぱりそこに音楽の原点があるからだと思う。そう思ってMuddy Watersを聴いているとなんだか嬉しくなってくる!
-Muddy Waters At Newport-
まず、レコードジャケットがカッコイイ!20才の頃に買ったと思うのだが、当時、このレコードを買った理由は「I've Got My Mojo Workin'」が入っていたからだった。ジャケットに書いている通り、1960年のNewport Jazz Festivalでのライヴ録音なんだが、歌と演奏がすごすぎて、もう、本当に脱帽だ。
「Keep Goin' On!」
生前、Muddy Watersがよくいってた言葉だそうだ。
「やりつづけろ!」
くぅー、ありがとう、マディ!
これもブルース。
追記:連載当初、ブルースマンのイラストを描き出したのは、この回が最初だった。イラストの感じが他の回とかなり違っているのはそのため。当時、このMuddy Watersを描き終え(たしか、5分くらいで描いたと思う)、近くにいたジョン・B・チョッパー氏に見せるも、「全然似てへんで」と言われたのがきっかけで、次の回から真剣に描くようになった。「似てる」「似てない」は別として、このときのジョン・B・チョッパー氏の一言は「真剣さが足りないんじゃない」と言いたかったのではと、いまになって思う。真剣にイラストを描いていないのを見透かされていたと言うか、、、。 この一言はとても有り難かった。 何事も「真剣」に取り組めば取り組むほど、楽しさはどんどん増えていくからね!
連載1回目のElmore Jamesと2回目のThe Rolling Stonesは当然ながらイラストがなかったので新たにというか、やっとこさ描いたといった感じ。転載ができてなかったらきっと描いていなかったと思う。そのうち、このMuddy Watersのイラストも「真剣」に描き直して、こっそり変わっているかもしれない。
初掲載:2007.11.16.
加筆・訂正:2010.07.09.
スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン
スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン
2008年の9月、奇跡の初来日を果たしたSly StoneことSylvester Stewart。まだその記憶が残っている方も多いのではないだろうか。オレも幸運なことに、ブルーノート東京でのライヴパフォーマンスを観ることができた。もちろん、全員がオリジナルメンバーではないのだが、当時のオリジナルメンバーだったCynthia Robinsonがライヴのオープニングで「Say! Get Up and Dance To The Music!」と、あの声で叫んだときは鳥肌が立ち、それだけで感動してしまった!
実質、Sly Stoneがステージにいた時間はかなり短かったものの、「Family Affair」や「If You Want Me Stay」を歌っている姿を観れただけでも、オレは十分だった。また、バックを務めていたバンドの演奏が本当に素晴らしく、現代的な「Sly & The Family Stone」と言うとわかりやすいだろうか。なんせ本当に素晴らしい演奏だったのだ!!!
-Dance To The Music-
タイトル曲は知っている方も多いと思う。先のブルーノート東京でのライヴのオープニングもこのタイトル曲だった!!!そんなこともあり、このアルバムはやはり外せない。リリースは1968年、セカンドアルバム。
-Stand!-
言わずもがなの名作!超名盤!!大傑作アルバム!!!数あるSly & The Family Stoneのアルバムの中でも一番聴いたアルバムでもあるし、本当に大好きなアルバムだ!リズム&ブルースと当時のサイケデリック・ロックが合体したら、Sly流のファンク・ロックが生まれたという感じだろうか。明快なわかりやすさがこのアルバムの大好きなところ。
高校生の頃、一緒にバンドをやっていた山本くんにカセットテープに録音してもらいよく聴いていたのだが、彼にはSly以外にもいろんな音楽を教えてもらった。感謝!そんな頃、京都の映画館で「Woodstock」と「Hail! Hail! Rock'n'Roll」(Chuck Berryの映画!)の豪華2本立てのレイトショーがあり、当時のバンドメンバーと一緒に観に行ったのだが、WoodstockでのSly & The Family Stoneのインパクトは強烈だった!しかも「I Want To Take You Higher」の歌詞が、本当は「I Want, I Want, I Want To Take You Higher!」と歌っているところを、何を勘違いしたのか、「A Motor, A Motor, A Motor Cycle Is A Honda!」という字幕が出て来て「なんじゃこりゃー!!!」と腹を抱えて大笑いした記憶がある。そんな歌詞なわけないのにね!Motor Cycle Is A Honda! ではなく、「I Want To Take You Higher」もこのアルバムに収録されている。1969年にリリースされた4枚目の作品。
-There's A Riot Goin' On-
大傑作アルバム「Stand!」に続く1971年リリースの5枚目のアルバム(間にGreatest Hitsがリリースされている)。このアルバムも名盤中の名盤!開放的で肉感的、異常なまでの体温を感じる前作「Stand!」とは対照的に、内側に熱く深く向かっていくこのアルバム。「Family Affair」や「Running Away」など名曲多数収録。Sly Stoneのセンスが爆発している1枚!
どうやらSly Stoneが薬物中毒になっていったのは、このアルバムの頃からとのことらしい。そんなこともあり、もう表舞台には戻ってこないものだと思っていたのだが、冒頭にも書いた奇跡の初来日!全世界のSly Stoneファンが喜んだのは間違いない。
今回紹介できなかったアルバム「Fresh」や「Small Talk」も名盤なので興味のある方は是非、聴いてみて欲しい。
2010.07.01.
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