ー前回のつづきー
ラジオから聴こえてきたThe Beatlesのアルバム「Revolver」は、ちょっとした衝撃だった。それまでのThe Beatlesに対するイメージは、曲で言うところの「Let It Be」であったり、「Yesterday」であったり、「Please Please Me」だったので、よくThe Rolling Stonesを引き合いに出して言われてる「The Beatlesは優等生の音楽で、The Rolling Stonesは不良の音楽」というような、軽はずみなイメージをオレも持っていたのだが、ラジオから聴こえてきた「Revolver」に収録された曲たちは、そんなイメージを軽く吹き飛ばしてくれた。たしかに「Here, There And Everywhere」や「For No One」なんかは優等生の部類に入るかもしれないが、「She Said She Said」や「Tomorrow Never Knows」に「優等生」という言葉は似合わないだろう。George Harrisonの曲「Love You To」に至っては「???」しか出てこなかったように思う。そんなこともあってThe Beatlesのことを初めて毒毒しく、且つサイケデリックに感じた、アルバム「Revolver」はオレにとって思い出深い。
-Revolver-
言わずと知れたThe Beatlesの名盤。盟友Klaus Voormannのジャケットデザインも秀逸だ。当時アナログ盤でモノラルMIXを探しては、大枚はたいて購入していたのだが、CDで聴けるようになったのは本当に嬉しいことだ!!!
「The Beatles=Rock'n'Roll」というのと同じように「The Rolling Stones=Blues」という図式もよく見られる。この「The Beatles VS The Rolling Stones」みたいなところは「優等生VS不良」というよりも「より白人的なThe Beatles VS より黒人的なThe Rolling Stones」といった感じだろうか。とはいっても、The Beatlesにもブルースの影響がみえる曲はたくさんある。John Lennon作の「Yer Blues」なんかはタイトルにも入っているし、「Revolution」のイントロなんかはモロElmore Jamesのスタイルだ。Paul McCartney作の「I’ve Got A Feeling」や「Why Don't We Do It In The Road ?」なんかもそうだろうし、「Helter Skelter」は「Anthology 3」に収録のバージョンを聴いてみるとおもしろいことになっている。George Harrisonの曲にも「For You Blue」や「Old Brown Shoe」など、ブルースからの影響が色濃い曲が存在する。しかもどの曲もアルバム「The Beatles(通称ホワイト・アルバム)」以降の曲というのがおもしろいところ。やはり一種の先祖帰りというか、ルーツミュージックに自然と向かっていったのだろうか。
-Hey Jude-
ブルース生誕100年を記念して作られた、Martin Scorsese制作総指揮の「THE BLUES Movie Project」の中に「Red White And Blues」という映画がある。これは「ブルース」という音楽が当時のイギリスのミュージシャンやバンドによって扉を開かれ、アメリカに逆輸入され「黒人の音楽」としてようやく受け入れられたという話を、Van MorrisonやSteve Winwood、Eric Claptonなどのインタビューを交えて、「ブルース」の影響が当時のイギリスでどんなものだったのかが描かれている。その中で大御所ブルースマンのB.B.Kingが「The BeatlesはRock'n'RollでBLUESじゃない。だが、それでも私は感じた、BLUESの匂いを。」と語っているシーンがあるのだが、上に挙げた曲のタイトルや形式だけのことを言っているのではないのが、その映像からはよくわかる。とても説得力のある言葉だ。興味のある方は是非映画を見てみて欲しい。
そう思ってThe Beatlesのアルバムをファーストアルバムから順番に聴くと、Rock'n'Rollをから始まって、Country Musicを通り、Classicと融合して、そしてBLUESに辿り着く、という道がなんとなく見えてくるのはオレだけだろうか。
いまだに魅力が尽きないThe Beatles。そしてRock'n'RollとBLUESの旅はまだまだ続く。
-Magical Mystery Tour-
初掲載:2009.05.08.
加筆、修正:2011.03.25.
ー前回のつづきー
サンコンJr.:憂歌団の始まりって、元々ブルースが好きな人の集まりやったんですか?
木村:ギターの勘太郎が、(エリック・)クラプトンのレコードのライナーノーツ見たら、B.B.キングやら黒人ブルースに影響受けたって書いてて、自分で探し出して聴くようになってん。で、オレが近所におったから「こんなんあんねんけど、木村、ギター弾けんねんやったら、カントリーブルースとかやって一緒に遊べへんか?」ってそんなノリやねん。
サ:へぇー、そうなんですか。
木:勘太郎がボトルネック自分で作ったりして。その横でサイドギター弾いとってん。
サ:へえぇー。
木:レコードなんかも「『ロバート・ジョンソン』って、絶対ええから、買えよ!」っていわれて、買って、聴いたんよ。エルモアもそうやけど「チュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチャイチャン」って全部一緒や。ロバート・ジョンソンも「ウィウィーウィウィーウィーアウィー」って、みんな一緒やなぁ思って。全然ピンとけえへんかってん。
サ:そうなんですか。
木:でもある日の夜中、友達が来たときかなぁ、同じレコードをかけたら、「スポーン!」って入ってきたんよ。「あ、このことか!」って。なんで同じ音が全然違うように聴こえんねんやろう?って思うくらい。人の気持ちってなんかあるやんか。「あ、この感じかなぁ」って。でもその頃は全然わかれへんかった。
サ:へぇー。
木:でも一番わかりやすいんは、ライブやった。初めてB.B.キングを毎日ホールで見たときに、「ドン!」ときた。「うわー、全然ちゃう!」って。レコードもええんやけど、もっともっと、もっともっと感じるものがすごいあった。その印象はずーっと残ってるなぁ。
サ:うわー、すごいですね!
木:76年にカントリーブルースのスリーピー・ジョン(・エスティス)とハミー・ニクソンと一緒に回ったんやけど、曲のキーが全部Gなんよ。簡単は簡単やねんけど(彼らは)自分の弾き方で弾くわけやんか。聴けば聴くほどな、すごいからな、真似なんかできるもんやない。テクニックとかそんなもんちゃうねん。聴けば聴くほどすごいんや。「うわー、なんやろう?」思てな。
サ:なんなんでしょうね?
木:感じるんやけど、これは真似できるもんじゃないって思うねんな。だからオレらはオレらの好きなことを、思うようにやるしかない。ひょっとして、歳いったら、あんなぐらいの雰囲気が出てるんかも知れんし。その頃ベースの花岡がストーンズが好きで、「オレらもずっとやってたら、ストーンズなれるか分からんぞ。もっとやってたら超えてるかも知れん」「そうやのう」とか言いながらやっとってん。
サ:本当にテクニックじゃないですよね。
木:テクニックちゃうよ。人の好みってそれぞれいろんな好みもあるし、クラプトンもものすごい人気もあるし、うまいと思うよ。でもオレはもっともっと感じるもんがあると思う。もっともっと深いもんがあると思う。だって黒人の人とクラプトンが弾いたら全然ちゃうもん。「芯」というか、「人の深さ」というか、「自由」とか、いろいろあんねん、体から出てくるもんが。「黒人やからいい」とかそういうもんじゃないねんけど、もらってるもんがあるんよ、感じるもんが。だからもっともっといろんな音楽聴いて、いろんな人に出会って欲しいなぁと思うねんなぁ。
サ:うわー、すごいですね。僕のこの連載のタイトル「これもブルース」っていうんですけど、「これがブルース!」っていうものがないと思ったからこういうタイトルにしたんですけど、いま、木村さんがおっしゃったことが、「ブルースとはなにか?」って答えなんかなと、、、。結局、その人からにじみ出てくるもんなんかなぁと思ったりして。
木:そんなんやんか。「ブルースって何かな?」って。その人それぞれが思うことやねん。感じて思うことが体から「すっ」と出てくることやと思うんやわ。「ブルースやってるんですね?」って言われんねんけど、「いや、僕は僕です」って答えるんよ。「ブルース」ってただの言葉やんか。「ジャズ」にしろ何にしろ。
サ:うむむ、そうですね。
木:でもな、ブルースっていうもんは「自然」に近いと思うねん。なんか「土」から生まれてくるもんやと、オレは思ってんねん。アーバンブルースとかモダンブルースとかいろいろ言うけど、もともとはそういうもんがあんねん。体から出てくるもんも「自然」やんか。頭でいってるもんは「頭」やんか。体からくるもんて「頭」じゃないから、もっと自然に感じるもんがある。
サ:直接入り込んでくるというか、、、。
木:それもある。もともと中にあるもんやから、あったかいねんな。そんな感じかな。ぎょうさんあるなぁ。「ブルース」いうたらいろんなことがあると思うわ。生きて感じることが全部ブルースちゃうかなぁ。
サ:生きてることがブルースですか!
木:そういうことやん。生きるいうのは、生き方もいっぱいあるけど、生活賭けてるいうのかな。
サ:そうですね。
木:「歌はどうして生まれるの?リズムはどして?」ってあんねんけど、自分の中から勝手に出てくんねんや。「アフリカのリズムがええ!」とかって話になったりするんやけど、結局やるときは全部自分のリズムやからな。
サ:そうですよね。
木:そうやん。だいたい真似から始まるんやけど、「ずーっと真似やっとんなぁ。こいつ自分のリズムでてないなぁ」いうやつがものすごい多いねん。でも子供の頃って勝手に自分のリズムがあんねや、本当は。変にいろいろやってもうたりするから、「そうやないよー!」ってな。何も考えんと出てくるもんが一番気持ちええやん。こう動かなアカンとかじゃなくて、勝手に動けてるってな。
サ:うわー、すごいなー。そうなりたいですよ。
木:一緒やん。そうなりたいいうか、そういう気持ちでやってるってな。「よっしゃ、今日はうまいこと行った!」思っててもな、次の日はガタガタになんねん。そんなんずーっとうまいこと行ってたら、もうつぶれてるって。
サ:ダハハハハ。本当にそう思いますよね。「こないだはこうできたのに、今日は全然ダメだー!」ってね。でもそれも含めて自分やからみたいなところですね。
木:そう。最近、覚えることよりも忘れることのほうが大事やと思ってんねん。特にいいことは忘れろ!って。いいことも悪いことも忘れた方がええねんって。ほなら今をもっと感じるから。過去に引きずられることは、今を感じられへんことになってくるから、あんまりよくないことがいっぱいある。
サ:うわぁ、それすごい言葉ですね!
木:でもな、勝手に出てくんねやんか。出てくるかなぁ?じゃなくて、出てくるから心配ないねん。で楽しなってきたらもっともっと時間欲しい。なんでこんなに楽しい時間が終わってしまうの?って。あぁ、でもそうか、また明日あるやんって思ったらなぁ。
サ:そうですよね。
木:・・・とかなんとかなぁ、いってるけどなぁ、全然アカンわ、ハハハハハ。
サ:いやー、やっぱり一個一個の言葉の重みが違いますよ。
木:ううん。音楽なんてな、年齢でやるもんじゃないし。におたら(臭ったら)感じるし、もうたら(もらったら)頑張るし、溜まったら何か出したいし。そうやってずーっとやるやんか。そんでそのうち、もっと気持ちよくできることがあると思って動いたつもりがちゃんと失敗するって。ハハハハハ。でも失敗しても笑えたらなぁ。それが大事やわ。ちょっとした失敗を深刻にガァーって思うのはなぁ。あんまりなぁ・・・。
サ:ホントそうですよね。でも今日お話できてすごいよかったです。
木:うん、話すんのも楽しいし、音出すのも楽しいし、飲むんも楽しいし。ムキに楽しもうとすんなよって。ゆっくりせぇゆっくり、勝手に出てくるから。心配せんでも無理せなあかんときは無理せなあかんねんから。ガハハハハ。
サ:ガハハハハ!そうですね。
木:でも無理して続けとったら、できることもできへんようになってまうやんか。調子がいいときって自然に動くから。そんで変に頭で考えてたら、今度は自分のタイミングを逃してしまうから。まずは力抜いてゆっくり持っていったら行けるよーって。僕はそんなこと思うけど。
サ:いやー、自分に言われてるみたいですわ。
木:いやいや、一緒やで。人に言うことって自分に思うことやもんな。
サ:いやー、つくづく自分からは逃げられないなぁ、って思いますよね。
木:人の話もそうやけど、自分が音出すときなんかなぁ、40歳になってやっと人の音を聴けてるような気分になったんやけど、あっというまになぁ、やっぱり人の音聴いてないわ!って。
サ:えーっ!?ほんとですか?
木:うん、自分で思った。でもなそのあとに、オレは人に音を聴かさなあかんタイプやからそれでええねん!って。
サ:そこまでいってるんですね。
木:それが大事で、それを聴いて反応してくれるとかあるやん、お互いやけど。でもバンドのときって、みんな勝手にそういうことができててんなぁ、って。うまい人はいっぱいいるけど、ほんとの「ハーモニー」とか、「うねり」というのはそういうもんじゃないんやろなぁ、思って。なんやろなぁ?って思って。うまい人はいっぱいいるけど、なんやろなぁ?って思って。音出して楽しいってどういうことやろなぁ?とか思ったりしてなぁ。
サ:ううう、すごいです。
木:ブルースってなに?ってあるんやけども、結局は人の気持ちなんやろな。でもオレはブルースいうもんに「自然」とか「土」っていうもんも感じるから好きなのもある。そう、ブルースはシンプルや、わりと。
サ:シンプルすぎて、さっきのスリーピーの話じゃないですけど、真似できへんってとこまで行ってしまいますよね。
木:でも結局1拍でも、その1拍を楽しむのは同じやないわけやんか。その1拍を楽しむことやから、それはもう考えてなくて、勝手にスイングするって感じやんな。まぁ、意識してやってる間は、まぁ、そんなもんやんか。でも、意識すんねやったら、まぁ意識してやったらええやん。
サ:うわー、がんばろー!
木:まぁ、口ではこんなん言ってるけどな。
サ:いやいやいや。でも、だから好きなんやなぁ、っていうのが分かった気がします。木村さん達が作ってきた音楽がなんで好きなのか、すごい確認できた気がします。間違ってなかったなと思えるし。
木:憂歌団のメンバーはみんなけっこうクセあるでぇ。でもな、一緒にやったら一緒に遊べるいうのがな、楽しなってくるいうのがおもしろいと思ってん。なんやろな?
サ:なんでしょうね?
木:それはひょっとしたら、表現する楽しさとか、音楽の力やと思うねんけど。
でも、基本は歌とリズムやからな。リズムってダンスやからな。歌とダンスがあったらなんぼでも遊べるやん。ゴスペルかって楽器がなかっても全然オッケーやん。
サ:そうですよね。あ、そういえば、昔のステージドリンクって毎回お酒やったって本当ですか?
木:そうそう。飲まれへんとき以外はね。まずは一気でぐっと飲んでから始めてたから。酒も弱いししんどいしな。
サ:えっっっ!お酒弱いんですか?
木:弱い!!!
サ:ほんまですか?
木:ゆっくり、ダラダラ飲むのがいい。
サ:えぇっ、そうなんですか!すっごい飲むんかと思ってました!
木・サ:ハハハハハ!!!、、、、、。
こんな感じで、木村さんとの楽しい対談は終わっていった。
連載当時は「〜お話しできてほんとよかったです」までだったのだが、それ以降の会話も今回は載せてみた。
いま読み返すと、木村さんが何を言おうとしていたのか、当時の自分よりもちょっとだけだがわかるような気がする。
木村さん、ありがとうございました!!!
初掲載:2008.03.14.
加筆、修正:2011.03.11.
グループの中心人物、George Clintonのレコード会社との契約の関係上、同時期に「Parliament」と「Funkadelic」という二つのバンドで活動していた。この二つのバンドを総称して「P. Funk」、「P. Funk All Stars」と言われることも。その「P. Funk All Stars」が確か「George Clinton」名義で(ややこしいなぁ)1989年頃来日しており、当時ウルフルズの他のメンバーは観に行っていたようだ。その後、オレが加入した頃は「P. Funk」がバンド内で流行っていた。中でも「Parliament」は全員が好きだったなぁ。もちろん現在も大好きなバンドの一つだ。
その頃、よく聴いたアルバム。
-Up For The Down Stroke-
1974年リリースのこのアルバム。1曲目のタイトル曲は今聴いても超絶にカッコイイ!!!ここでというか、このバンドでベースを弾いているのはJames Brown、J.B.'sで大活躍した、William Collinsこと、William "Bootsie" Collinsだ!そりゃ好きなハズだわ。M-5のヒョウヒョウとした口笛ソロは聴きもの!!!
-Chocolate City-
続いて1975年にリリースされたアルバム。タイトル曲のM-1からゴキゲンなM-2、Sly & The Family Stoneを彷彿させるM-3、名曲「Soul Man」を思い出させるM-9など、名曲、名演が詰まっているアルバムだ!
-Mothership Connection-
ジャケットに写っている宇宙人とおぼしき人物がGeorge Clintonその人なわけなんだが、この作品から「宇宙」がテーマになっていったのか、以降スペイシーなジャケットが続くことになる。が、なんといっても、Fred Wesley、Maceo Parker、Brecker Brothers、Joe Farrellといったホーン隊の参加というのも見逃せないとろだ。M-1からM-7まで踊り続けてしまうこと間違いナシの超名盤!!!
この他にも、今手元になくジャケットが掲載できないのだが「Parliament Live P. Funk Earth Tour」なるライヴ盤も是非とも聴いてみて欲しい。
2011.03.01.
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