2010.11.12 (Fri)
これもブルース 第7回「SOULという名のブルース!」
Lowell Fulson (Lowell Fulsomと表記してる時代もある)
「ブルースの眠れる巨人」といわれているLowell Fulson。この人を知ったのは、本当につい最近のこと(連載当時)。まだこの連載が始まる前、知ってか知らずかある日のこと、スタジオに行くとトータス松本氏が「これ、貸したるわ。ひさびさに聴いたけど、すっごいわかりやすかったわ。」とブルース・デラックスなるCD10枚組のBOXセットを貸してくれたのだ。いろんな人のインタビューあり、詳細なデータありと、初心者のオレにはまさにうってつけだった。
家に帰り1枚ずつ聴きながら「ふーん、なるほど」とか、「うわっ、Muddy Watersのこの曲のスタジオバージョン初めて聴いたっ!」とか、独り言をブツブツと言いながら聴いてると、なにやら聴き覚えのある曲が。「あれ?この曲なんで?」と出てきたのはLowell Fulsonが歌う「Tramp」だった。もちろんOtis ReddingとCarla Thomasのデュエットっでおなじみのこの曲なんだが、原曲があったとは知らなかった。しかも、この曲以降、収録されている曲がどれもオレの好きな感じで素晴らしかった!さすがブルースの眠れる巨人!
-Tramp-
1967年リリースのこのアルバム。内容は最高だ!「トテトテペキーン」という独特の単音のギターフレーズを聴いた瞬間、「!!!!!」となったオレに拍手を送りたい(なんで?)。そう、ギターがしゃべっているのだ。オレが言っていることが大げさでないのが聴いてもらうと良くわかる。無駄のないバックの演奏といい最高に好きなアルバムだ!
-Soul-
1966年リリースなのでTrampの前作にあたるこのアルバム。オレが購入したものはTrampとの最強の2in1で発売されていたものなので、ジャケット写真のLowell Folsonの写真が小さくなってしまったのだが、よく見るとこの写真は傑作だ!いやいや、内容もTrampに負けず劣らず最高の内容になっている!
ブルースやけど「SOUL」、、、。
Magic Samのアルバムも「West Side Soul」というタイトルやったし、、、。
じゃあ、
あらためて「ブルース」ってなんなんやろう?
思うに、音楽の呼び方(ブルースとかR&Bとか)は、ただの便宜上のもんで、その人の音楽とは本来は関係ないように思ってきたことと、好きなものと嫌いなものはとてもはっきりしてるということ。スピーカーの向こうから「オレはこうだー!」とか「ワタシはこうよー!」と訴えかけてくるエネルギーが、どの人もハンパじゃなく強烈なのだ。しかも一音一音に説得力がちゃんとある。好みがはっきりするというのはそういうことだろう。
では、そういう「音」はどうやったら出せるようになるのかしら?
探求は続くよどこまでも。
これもブルース。
初掲載:2008.01.18.
加筆、修正:2010.11.12.
「ブルースの眠れる巨人」といわれているLowell Fulson。この人を知ったのは、本当につい最近のこと(連載当時)。まだこの連載が始まる前、知ってか知らずかある日のこと、スタジオに行くとトータス松本氏が「これ、貸したるわ。ひさびさに聴いたけど、すっごいわかりやすかったわ。」とブルース・デラックスなるCD10枚組のBOXセットを貸してくれたのだ。いろんな人のインタビューあり、詳細なデータありと、初心者のオレにはまさにうってつけだった。
家に帰り1枚ずつ聴きながら「ふーん、なるほど」とか、「うわっ、Muddy Watersのこの曲のスタジオバージョン初めて聴いたっ!」とか、独り言をブツブツと言いながら聴いてると、なにやら聴き覚えのある曲が。「あれ?この曲なんで?」と出てきたのはLowell Fulsonが歌う「Tramp」だった。もちろんOtis ReddingとCarla Thomasのデュエットっでおなじみのこの曲なんだが、原曲があったとは知らなかった。しかも、この曲以降、収録されている曲がどれもオレの好きな感じで素晴らしかった!さすがブルースの眠れる巨人!
-Tramp-
1967年リリースのこのアルバム。内容は最高だ!「トテトテペキーン」という独特の単音のギターフレーズを聴いた瞬間、「!!!!!」となったオレに拍手を送りたい(なんで?)。そう、ギターがしゃべっているのだ。オレが言っていることが大げさでないのが聴いてもらうと良くわかる。無駄のないバックの演奏といい最高に好きなアルバムだ!
-Soul-
1966年リリースなのでTrampの前作にあたるこのアルバム。オレが購入したものはTrampとの最強の2in1で発売されていたものなので、ジャケット写真のLowell Folsonの写真が小さくなってしまったのだが、よく見るとこの写真は傑作だ!いやいや、内容もTrampに負けず劣らず最高の内容になっている!
ブルースやけど「SOUL」、、、。
Magic Samのアルバムも「West Side Soul」というタイトルやったし、、、。
じゃあ、
あらためて「ブルース」ってなんなんやろう?
思うに、音楽の呼び方(ブルースとかR&Bとか)は、ただの便宜上のもんで、その人の音楽とは本来は関係ないように思ってきたことと、好きなものと嫌いなものはとてもはっきりしてるということ。スピーカーの向こうから「オレはこうだー!」とか「ワタシはこうよー!」と訴えかけてくるエネルギーが、どの人もハンパじゃなく強烈なのだ。しかも一音一音に説得力がちゃんとある。好みがはっきりするというのはそういうことだろう。
では、そういう「音」はどうやったら出せるようになるのかしら?
探求は続くよどこまでも。
これもブルース。
初掲載:2008.01.18.
加筆、修正:2010.11.12.
2010.10.08 (Fri)
これもブルース 第6回「ヘーイ!ヘーイ!とジャングルビートがやってきた!」
Bo Diddley ボ・ディドリー
本名 Ellas McDaniel
この連載を始めてから思い出して聴き直したレコードは結構あり、いま聴いても「うぉぉぉおおおおおー!」と思うものや、当時、一度は聴いてみたものの、「うーん、、、、、」と、そんなに興味をそそられなかったものが、いまになってすごくかっこ良く聴こえたり、と音楽の素晴らしさを改めて実感している今日この頃。今回のBo Diddleyという人は当時も今も「うぉぉぉおおおおおー!」となってしまう人だ。
この人のレコードはその昔、ウルフル・ケイスケ氏に借りてカセットテープに録音して聴いていたのだが、そのカセットテープもどこにいったのか見当たらず、現在、Bo DiddleyのCDは入手困難な為(連載当時)、ケイスケ氏がまだアナログレコードを持っているか尋ねてみた。
サンコンJr.「昔借りたBo Diddleyのレコードってまだ持ってます?」
ウルフル・ケイスケ「あるけど、CDちゃうで。レコードやで。」
サ「ええ、レコードでいいんです。たしか、『ファースト』と『GO Bo Diddley』とあと何枚か借りたと思うんやけど・・・。」
ケ「『ファースト』は持ってたかどうかわからんけど、他のはあるわ。ベスト盤やったらCDも持ってるし。」
サ「じゃあ借りてもいいですか?初期の頃のアルバムがCDで手に入りにくくなってるんで。」
ケ「そうなんや。ええよ、ええよ。今度全部持っていくわ。」
-GO Bo Diddley-
ブルースの名門「Chess」レーベルからリリースされた2ndアルバム。名曲「Crackin'Up」収録!1959年リリース。現在はCDで手に入るようだ。
Bo Diddleyの曲も、最初の出会いはThe Rolling Stonesのファースト・アルバムに収録されている「Mona 」だった。いや、もしかしたら、The Roostersがカヴァーしてた「モナ」のほうを先に聴いていたような、、、。「ジャガズジャガズジャガ、ウジャジャンジャン!」とこの人のトレードマークになっている「Jungle Beat」(や「Bo Diddley Beat」)と呼ばれているリズムの曲なんやけど、誰もが知っているリズムに自分の名前が付いているって、すごすぎる!
-Bo Diddley Is A Gunslinger-
この人の曲は本当にノリが良く、シンプルで、とてもなじみやすい。コーラスとの掛け合いの曲も数多くあり、聴いているだけで本当に楽しくなってくる! このアルバムはChessレーベルからの5作目で、The Kinksのカヴァーでもよく知られている「Cadillac」が収録されている他、タイトル曲の「Gun Slinger」や「Ride On Josephine」など、口ずさみながら体が動いてしまうこと間違いない!1961年リリース。
-In The Spotlight-
Chessレーベルからの4作目。超名盤!このジャケットに写っている四角いギターを初めて見たときは、「こんなギターあるんや?!」ってな感じで驚かずにはいられなかった。「Road Runner」「Let Me In」など名曲多数!リリースは1960年。
四角いギターに「Go Bo Diddley」のジャケットでも着ていた派手なタータンチェックのスーツと、今思うと、このBo Diddleyという人は当時としては、かなりコンセプトがはっきりしていた人のようだ。曲の大半が8ビートではなく2ビートを基本としてるとこも、ブルースとロックンロールの架け橋的な存在と言われてるのはとても納得のできるところ。ちなみに、BO GUMBOSの「BO」はBo Diddleyの「BO」からきてるのは有名な話。どんとさんも四角いギター弾いてたなぁ。
そんなBo Diddleyの影響は、未来永劫この先も続く。
現在、79才のロックンローラー。
これもブルース。
初掲載:2007.12.28.
加筆、修正:2010.10.08.
追記:2008年6月2日、心不全のため永眠されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
本名 Ellas McDaniel
この連載を始めてから思い出して聴き直したレコードは結構あり、いま聴いても「うぉぉぉおおおおおー!」と思うものや、当時、一度は聴いてみたものの、「うーん、、、、、」と、そんなに興味をそそられなかったものが、いまになってすごくかっこ良く聴こえたり、と音楽の素晴らしさを改めて実感している今日この頃。今回のBo Diddleyという人は当時も今も「うぉぉぉおおおおおー!」となってしまう人だ。
この人のレコードはその昔、ウルフル・ケイスケ氏に借りてカセットテープに録音して聴いていたのだが、そのカセットテープもどこにいったのか見当たらず、現在、Bo DiddleyのCDは入手困難な為(連載当時)、ケイスケ氏がまだアナログレコードを持っているか尋ねてみた。
サンコンJr.「昔借りたBo Diddleyのレコードってまだ持ってます?」
ウルフル・ケイスケ「あるけど、CDちゃうで。レコードやで。」
サ「ええ、レコードでいいんです。たしか、『ファースト』と『GO Bo Diddley』とあと何枚か借りたと思うんやけど・・・。」
ケ「『ファースト』は持ってたかどうかわからんけど、他のはあるわ。ベスト盤やったらCDも持ってるし。」
サ「じゃあ借りてもいいですか?初期の頃のアルバムがCDで手に入りにくくなってるんで。」
ケ「そうなんや。ええよ、ええよ。今度全部持っていくわ。」
-GO Bo Diddley-
ブルースの名門「Chess」レーベルからリリースされた2ndアルバム。名曲「Crackin'Up」収録!1959年リリース。現在はCDで手に入るようだ。
Bo Diddleyの曲も、最初の出会いはThe Rolling Stonesのファースト・アルバムに収録されている「Mona 」だった。いや、もしかしたら、The Roostersがカヴァーしてた「モナ」のほうを先に聴いていたような、、、。「ジャガズジャガズジャガ、ウジャジャンジャン!」とこの人のトレードマークになっている「Jungle Beat」(や「Bo Diddley Beat」)と呼ばれているリズムの曲なんやけど、誰もが知っているリズムに自分の名前が付いているって、すごすぎる!
-Bo Diddley Is A Gunslinger-
この人の曲は本当にノリが良く、シンプルで、とてもなじみやすい。コーラスとの掛け合いの曲も数多くあり、聴いているだけで本当に楽しくなってくる! このアルバムはChessレーベルからの5作目で、The Kinksのカヴァーでもよく知られている「Cadillac」が収録されている他、タイトル曲の「Gun Slinger」や「Ride On Josephine」など、口ずさみながら体が動いてしまうこと間違いない!1961年リリース。
-In The Spotlight-
Chessレーベルからの4作目。超名盤!このジャケットに写っている四角いギターを初めて見たときは、「こんなギターあるんや?!」ってな感じで驚かずにはいられなかった。「Road Runner」「Let Me In」など名曲多数!リリースは1960年。
四角いギターに「Go Bo Diddley」のジャケットでも着ていた派手なタータンチェックのスーツと、今思うと、このBo Diddleyという人は当時としては、かなりコンセプトがはっきりしていた人のようだ。曲の大半が8ビートではなく2ビートを基本としてるとこも、ブルースとロックンロールの架け橋的な存在と言われてるのはとても納得のできるところ。ちなみに、BO GUMBOSの「BO」はBo Diddleyの「BO」からきてるのは有名な話。どんとさんも四角いギター弾いてたなぁ。
そんなBo Diddleyの影響は、未来永劫この先も続く。
現在、79才のロックンローラー。
これもブルース。
初掲載:2007.12.28.
加筆、修正:2010.10.08.
追記:2008年6月2日、心不全のため永眠されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
2010.09.10 (Fri)
これもブルース 第5回 「ウエスト・サイド・ブギー」
Magic Sam
マジック・サム
ある日の会話。
サンコンJr.「松本君、マジック・サムのあれっていいのん?」
トータス松本「ん!?あれって、どれ?」
サ「あの、ほら、『ブラック・マジック』やなくて、、、なんやったっかな、、、タイトルがわからんなぁ。」
ト「、、、。」
サ「ほら、ジャケットがサイケデリックな感じのあるじゃないですか。」
ト「、、、あぁ、『ウエスト・サイド・ソウル』かー!」
サ「そう!それ、それ!」
ト「あれ、すーんごいええよ!マジック・サムの中で一番好きやわ。」
ジョン・B・チョッパー「あれ、ええよ。全体がすごい明るくて、なんかカラっとしてる。」
サ「そうなんや。」
ジ「サンコン持ってないん?」
サ「うん、持ってないんよ。」
ジ「じゃあ、今度、貸したげるわ。」
という会話はつい最近の話(連載当時)。
-West Side Soul-
Magic Samのアルバム「West Side Soul」は本当にすばらしい。アルバム全体からは、ブルースというよりもソウル・ミュージックやリズム&ブルースの匂いを強く感じる。この人のギターもやはり爆発してるのだが、第1回のElmore Jamesのような爆発感とはちょと違っていて、もっと都会的というか、かなり洗練されているように聴こえる。「Feel So Good」のリズムギターの感じなんか、「グッツグッツグッツグッツ」とマグマの噴火直前のような、そんなことを想像してしまうのはオレだけだろうか。
ギターの一音一音がギラギラしてて、あまり訛っていないのが都会的に聴こえるのだろう。だからといって、あっさりしている訳でもなく、切れ味がするどいと言うとわかりやすいだろうか。そう、「切れ味がするどい」ということは、やはりリズムがすごく際立っているということだと思う。刀で「スパッ!」と斬られてる、そんな風に感じてしまう。Magic Samの歌声はいい意味でドスが利いていなく、カラッと乾いた声をしていて、ブルースによくある湿り気はあんまり感じない。そこにMagic Samという人の「憂い」がプラスされてこの人のブルースになるのだろう。興味のあるかたは是非とも聴いてみて欲しい。
高校生の頃、ソウル・ミュージックやリズム&ブルースに興味を持ち始めたのと同じように、「ブルース」という音楽にも普通に興味を持った。当時、The Rolling Stonesのライナーノーツで「Muddy Waters」という名前を覚えたように、「Magic Sam」という名前も何かの本で覚えていた。そんなある日、大阪のミナミ(心斎橋周辺)にあった「吉村レコード」という、ブルース、リズム&ブルース、ソウル・ミュージック専門のレコード屋さんを見つけて、おそるおそる入ってみたが、スタンダードなレコードからマニアックなものまで、ちょっと圧倒されるくらいの品揃えで、高校生の自分には相応しくないのがわかり、思わず「しまった!」と声を出しそうになったのだが、いま思うと、とても貴重なお店だった。
このお店はおもしろいところがあって、有名なアルバムや店長さんおすすめのアルバムには、プライスカードに「あるうちに買っときや!」とか、「もってな恥!」 というスタンプが押されていて、Magic Samのアルバム「West Side Soul」には「もってな恥!」のスタンプが押されていたような気がする。しかし、なぜかオレが手に取ったのは、なんのスタンプも押されていない、Magic Samがコブラ・レーベル時代にリリースされた「All Your Love」というマニアックなアルバムだった。
-All Your Love-
これはかなり通好みのアルバムだ。「West Side Soul」や「Black Magic」を聴いて、さらに、Magic Samを知りたい!という人が買うアルバムなんだと思う。が、なぜか、オレは最初に買ってしまった、、、。いま思うと、店長さんの言うことを素直に聞いて、「West Side Soul」をつかんでいたら、もっと早く、自分なりに「ブルース」に親しんでいたかもしれない。
何事も最初に感じる印象はとても大事ということか。
これもブルース。
初掲載:2007.12.14.
加筆、修正:2010.09.10.
マジック・サム
ある日の会話。
サンコンJr.「松本君、マジック・サムのあれっていいのん?」
トータス松本「ん!?あれって、どれ?」
サ「あの、ほら、『ブラック・マジック』やなくて、、、なんやったっかな、、、タイトルがわからんなぁ。」
ト「、、、。」
サ「ほら、ジャケットがサイケデリックな感じのあるじゃないですか。」
ト「、、、あぁ、『ウエスト・サイド・ソウル』かー!」
サ「そう!それ、それ!」
ト「あれ、すーんごいええよ!マジック・サムの中で一番好きやわ。」
ジョン・B・チョッパー「あれ、ええよ。全体がすごい明るくて、なんかカラっとしてる。」
サ「そうなんや。」
ジ「サンコン持ってないん?」
サ「うん、持ってないんよ。」
ジ「じゃあ、今度、貸したげるわ。」
という会話はつい最近の話(連載当時)。
-West Side Soul-
Magic Samのアルバム「West Side Soul」は本当にすばらしい。アルバム全体からは、ブルースというよりもソウル・ミュージックやリズム&ブルースの匂いを強く感じる。この人のギターもやはり爆発してるのだが、第1回のElmore Jamesのような爆発感とはちょと違っていて、もっと都会的というか、かなり洗練されているように聴こえる。「Feel So Good」のリズムギターの感じなんか、「グッツグッツグッツグッツ」とマグマの噴火直前のような、そんなことを想像してしまうのはオレだけだろうか。
ギターの一音一音がギラギラしてて、あまり訛っていないのが都会的に聴こえるのだろう。だからといって、あっさりしている訳でもなく、切れ味がするどいと言うとわかりやすいだろうか。そう、「切れ味がするどい」ということは、やはりリズムがすごく際立っているということだと思う。刀で「スパッ!」と斬られてる、そんな風に感じてしまう。Magic Samの歌声はいい意味でドスが利いていなく、カラッと乾いた声をしていて、ブルースによくある湿り気はあんまり感じない。そこにMagic Samという人の「憂い」がプラスされてこの人のブルースになるのだろう。興味のあるかたは是非とも聴いてみて欲しい。
高校生の頃、ソウル・ミュージックやリズム&ブルースに興味を持ち始めたのと同じように、「ブルース」という音楽にも普通に興味を持った。当時、The Rolling Stonesのライナーノーツで「Muddy Waters」という名前を覚えたように、「Magic Sam」という名前も何かの本で覚えていた。そんなある日、大阪のミナミ(心斎橋周辺)にあった「吉村レコード」という、ブルース、リズム&ブルース、ソウル・ミュージック専門のレコード屋さんを見つけて、おそるおそる入ってみたが、スタンダードなレコードからマニアックなものまで、ちょっと圧倒されるくらいの品揃えで、高校生の自分には相応しくないのがわかり、思わず「しまった!」と声を出しそうになったのだが、いま思うと、とても貴重なお店だった。
このお店はおもしろいところがあって、有名なアルバムや店長さんおすすめのアルバムには、プライスカードに「あるうちに買っときや!」とか、「もってな恥!」 というスタンプが押されていて、Magic Samのアルバム「West Side Soul」には「もってな恥!」のスタンプが押されていたような気がする。しかし、なぜかオレが手に取ったのは、なんのスタンプも押されていない、Magic Samがコブラ・レーベル時代にリリースされた「All Your Love」というマニアックなアルバムだった。
-All Your Love-
これはかなり通好みのアルバムだ。「West Side Soul」や「Black Magic」を聴いて、さらに、Magic Samを知りたい!という人が買うアルバムなんだと思う。が、なぜか、オレは最初に買ってしまった、、、。いま思うと、店長さんの言うことを素直に聞いて、「West Side Soul」をつかんでいたら、もっと早く、自分なりに「ブルース」に親しんでいたかもしれない。
何事も最初に感じる印象はとても大事ということか。
これもブルース。
初掲載:2007.12.14.
加筆、修正:2010.09.10.
2010.08.13 (Fri)
これもブルース 第4回 「ブルースと、スケベ心と、ルイジアナ!」
Slim Harpo
スリム・ハーポ
本名は James Moore(ジェイムス・ムーア)。この人との出会いも、The Rolling Stonesだった。ファーストアルバムに収録されていた「 ( I'm a ) King Bee」という曲で、「ウェラマキングベー、バズンラーンジョンハイ」と淡々と進む構成が、もう退屈で退屈で、正直、嫌いな曲だった。しかし、いま聴いてみると、原曲に対してかなり忠実な演奏、そして間奏にはBrian Jonesの弾くスライドギターが入っていて、その音が「ブンブン」と飛んでいるハチの羽音のように聴こえるのがおもしろい。
-Raining In My Heart-
Slim Harpoの原曲を聴いたのはウルフルズに入ってからだった。これは、たしかケイスケ氏に貸してもらったものだったと記憶している。「Raining In My Heart」と「Tip On In」というアルバムをセットで借りたのだが、この人の独特な声というか、発声というか、 歌声を初めて聴いたときは衝撃だった。「えーっ!?これもブルースなのか!?」と。そんな 鼻から抜ける甘い声で、歌ってる内容はというと「そう、俺は蜂の王様。お前の巣の周りをブンブン飛び周り、最高の蜂蜜を作れるぜ。さぁ俺を中に入れとくれ。」と、かーなりスケベな内容だ。しかし、この甘い声で歌っているところを想像してみると、かなりモテたんじゃないかな。きっと「キャー!キャー!スリムー!」と黄色い声援を浴びていたに違いない。
-Tip On In-
そんな甘い声のSlim Harpoが歌うブルースは 、Muddy Watersらのシカゴ・ブルースのノリとはまたひと味違い、リズム&ブルースやロックンロールにかなり近いように思う。ルイジアナ・ブルースと言われているだけあって、New Orleans特有のノリを感じるのはオレだけだろうか。アレンジはシンプルでわかりやすく、歌はヒョウヒョウとしてて、どこまでもとぼけた感じがあるのだが、リズムの枠組みはとても太くてしっかりしている。きっとこの組み合わせが絶妙な説得力を生み出しているのだろう。そういえば、New Orleansのピアニスト&シンガーのProfessor Longhairも、ヒョウヒョウとした歌と独特のリズムという組み合わせだったなぁ。そこには何かがあるのかも知れない。
-Exile On Main ST/The Rolling Stones-
このアルバムに収録されている「Shake Your Hips」という曲も、Slim Harpoのナンバーだ。こういうところが、The Rolling Stonesのセンスの良さと言うか、さすがといったところ。
ある日のこと、「サンコンさん、髪伸びるのはやいですねー。髪が伸びるのがはやい人はいやらしいってよくいいますよね。」といわれ、
「そうねぇ、ははははは。」
と返したのだが、この「髪が伸びるのがはやい=スケベ」みたいな因果関係は一体どこまで本当の話なんだろうか?オレも、もちろん、スケベには間違いないが、スケベはスケベでもムッツリ・スケベなんよねー、これが。だからオープンなスケベの人には、、、憧れがある。オープンなほうが、あんまりいやらしい感じがしないし。って、なんの話?。この方程式みたいなものが正しいとすると、Slim Harpoだけじゃなく、昔のブルースマン達は、皆、すっごい勢いで髪の毛が伸びていたに違いない。オープンだろうが、ムッツリだろうが、何事にも「スケベ心」は大切ということか。
これもブルース。
初掲載:2007.11.30.
加筆、修正:2010.08.13.
スリム・ハーポ
本名は James Moore(ジェイムス・ムーア)。この人との出会いも、The Rolling Stonesだった。ファーストアルバムに収録されていた「 ( I'm a ) King Bee」という曲で、「ウェラマキングベー、バズンラーンジョンハイ」と淡々と進む構成が、もう退屈で退屈で、正直、嫌いな曲だった。しかし、いま聴いてみると、原曲に対してかなり忠実な演奏、そして間奏にはBrian Jonesの弾くスライドギターが入っていて、その音が「ブンブン」と飛んでいるハチの羽音のように聴こえるのがおもしろい。
-Raining In My Heart-
Slim Harpoの原曲を聴いたのはウルフルズに入ってからだった。これは、たしかケイスケ氏に貸してもらったものだったと記憶している。「Raining In My Heart」と「Tip On In」というアルバムをセットで借りたのだが、この人の独特な声というか、発声というか、 歌声を初めて聴いたときは衝撃だった。「えーっ!?これもブルースなのか!?」と。そんな 鼻から抜ける甘い声で、歌ってる内容はというと「そう、俺は蜂の王様。お前の巣の周りをブンブン飛び周り、最高の蜂蜜を作れるぜ。さぁ俺を中に入れとくれ。」と、かーなりスケベな内容だ。しかし、この甘い声で歌っているところを想像してみると、かなりモテたんじゃないかな。きっと「キャー!キャー!スリムー!」と黄色い声援を浴びていたに違いない。
-Tip On In-
そんな甘い声のSlim Harpoが歌うブルースは 、Muddy Watersらのシカゴ・ブルースのノリとはまたひと味違い、リズム&ブルースやロックンロールにかなり近いように思う。ルイジアナ・ブルースと言われているだけあって、New Orleans特有のノリを感じるのはオレだけだろうか。アレンジはシンプルでわかりやすく、歌はヒョウヒョウとしてて、どこまでもとぼけた感じがあるのだが、リズムの枠組みはとても太くてしっかりしている。きっとこの組み合わせが絶妙な説得力を生み出しているのだろう。そういえば、New Orleansのピアニスト&シンガーのProfessor Longhairも、ヒョウヒョウとした歌と独特のリズムという組み合わせだったなぁ。そこには何かがあるのかも知れない。
-Exile On Main ST/The Rolling Stones-
このアルバムに収録されている「Shake Your Hips」という曲も、Slim Harpoのナンバーだ。こういうところが、The Rolling Stonesのセンスの良さと言うか、さすがといったところ。
ある日のこと、「サンコンさん、髪伸びるのはやいですねー。髪が伸びるのがはやい人はいやらしいってよくいいますよね。」といわれ、
「そうねぇ、ははははは。」
と返したのだが、この「髪が伸びるのがはやい=スケベ」みたいな因果関係は一体どこまで本当の話なんだろうか?オレも、もちろん、スケベには間違いないが、スケベはスケベでもムッツリ・スケベなんよねー、これが。だからオープンなスケベの人には、、、憧れがある。オープンなほうが、あんまりいやらしい感じがしないし。って、なんの話?。この方程式みたいなものが正しいとすると、Slim Harpoだけじゃなく、昔のブルースマン達は、皆、すっごい勢いで髪の毛が伸びていたに違いない。オープンだろうが、ムッツリだろうが、何事にも「スケベ心」は大切ということか。
これもブルース。
初掲載:2007.11.30.
加筆、修正:2010.08.13.
2010.07.09 (Fri)
これもブルース 第3回 「マディ! アイム、レディ!」
Muddy Waters マディ・ウォーターズ
本名 McKinley Morganfield
おそらく、初めてオレが耳にしたブルースマンの名前が、このMuddy Watersだ。直訳すると「泥水」なんだが、「どろみず」って、、、。もちろんこれは本名ではなくニックネーム。本名は、McKinley Morganfield。子供の頃、泥んこになって遊んでたから、こう呼ばれるようになったとか。そういえば、ブルースマンの名前はニックネームの人がやたらと多い。Howlin WolfやBo Diddley、Junior Wellsもそうだ。Slim Harpoって名前の人もいるなぁ。そういうオレもサンコンJr.と名乗っているのだが、、、。ちなみに小学校のときのニックネームは「サコジョウ」だった。まぁ、そんな話は置いといて、、、。
Muddy Watersを知ったのは、当然ながらというか、やっぱりThe Rolling Stonesのおかげだった。彼らのファーストアルバムに「I Just Want To Make Love To You」(邦題「恋をしようよ」)という曲が入っていて、ライナーノーツを読んでいると、「この曲は1954年にR&Bチャートでベスト5に、、、、、。」とあり、そこに書かれていた名前がMuddy Watersだった。
さぞや原曲もすごいことになっているに違いない!と勝手な期待に胸ふくらませ、レンタルレコードショップ(当時はまだCDはなかったので、LPレコードを貸してくれるお店が普通だった)に足を運んだ。「The Best Of Muddy Waters」を借りて、家に帰り、1曲目に収録されていた「I Just Want To Make Love To You」に針を落とすと、聴こえてきたのは思いもしていなかった音楽だった。「えぇー!なにこれ?」っていうくらい、The Rolling Stonesのカヴァーとは対照的で、全く好きになれなかった。The Rolling Stonesの超攻撃的でスピード感バリバリなアレンジに対し、Muddy Watersの原曲は、かなりゆったりとしていて、メチャメチャ渋いアレンジ。今聴くと、もちろんカッコイイのだが、その「渋さ」は当時の血気盛んなオレには楽しめるはずもなく、「ブルース」という音楽へ目に見えない壁を作ってしまう。
-The Best Of Muddy Waters-
この妖しく浮かび上がるMuddy Watersの顔!The Rolling Stonesのバンド名にもなった「Rollin' Stone」、名曲「I Can't Be Satisfied」、「I'm Ready」など、Chess時代の代表曲がギュっと詰まっている。まぁ、ベストなんで当然と言えば当然か。現在はボーナストラックが追加されたものが発売されている。
そんな、若造だったオレも20才年をとって、今またMuddy Watersを聴いている。しゃべるように歌い、話すようにギターを弾いているMuddy Waters。いや、歌うようにしゃべってるのかなぁ。とてもかっこいい。また、Muddy Watersのバンドがすごいんだ!何十年も前に録音された音楽に、こんなにもワクワクしたりドキドキするのは、やっぱりそこに音楽の原点があるからだと思う。そう思ってMuddy Watersを聴いているとなんだか嬉しくなってくる!
-Muddy Waters At Newport-
まず、レコードジャケットがカッコイイ!20才の頃に買ったと思うのだが、当時、このレコードを買った理由は「I've Got My Mojo Workin'」が入っていたからだった。ジャケットに書いている通り、1960年のNewport Jazz Festivalでのライヴ録音なんだが、歌と演奏がすごすぎて、もう、本当に脱帽だ。
「Keep Goin' On!」
生前、Muddy Watersがよくいってた言葉だそうだ。
「やりつづけろ!」
くぅー、ありがとう、マディ!
これもブルース。
追記:連載当初、ブルースマンのイラストを描き出したのは、この回が最初だった。イラストの感じが他の回とかなり違っているのはそのため。当時、このMuddy Watersを描き終え(たしか、5分くらいで描いたと思う)、近くにいたジョン・B・チョッパー氏に見せるも、「全然似てへんで」と言われたのがきっかけで、次の回から真剣に描くようになった。「似てる」「似てない」は別として、このときのジョン・B・チョッパー氏の一言は「真剣さが足りないんじゃない」と言いたかったのではと、いまになって思う。真剣にイラストを描いていないのを見透かされていたと言うか、、、。 この一言はとても有り難かった。 何事も「真剣」に取り組めば取り組むほど、楽しさはどんどん増えていくからね!
連載1回目のElmore Jamesと2回目のThe Rolling Stonesは当然ながらイラストがなかったので新たにというか、やっとこさ描いたといった感じ。転載ができてなかったらきっと描いていなかったと思う。そのうち、このMuddy Watersのイラストも「真剣」に描き直して、こっそり変わっているかもしれない。
初掲載:2007.11.16.
加筆・訂正:2010.07.09.
本名 McKinley Morganfield
おそらく、初めてオレが耳にしたブルースマンの名前が、このMuddy Watersだ。直訳すると「泥水」なんだが、「どろみず」って、、、。もちろんこれは本名ではなくニックネーム。本名は、McKinley Morganfield。子供の頃、泥んこになって遊んでたから、こう呼ばれるようになったとか。そういえば、ブルースマンの名前はニックネームの人がやたらと多い。Howlin WolfやBo Diddley、Junior Wellsもそうだ。Slim Harpoって名前の人もいるなぁ。そういうオレもサンコンJr.と名乗っているのだが、、、。ちなみに小学校のときのニックネームは「サコジョウ」だった。まぁ、そんな話は置いといて、、、。
Muddy Watersを知ったのは、当然ながらというか、やっぱりThe Rolling Stonesのおかげだった。彼らのファーストアルバムに「I Just Want To Make Love To You」(邦題「恋をしようよ」)という曲が入っていて、ライナーノーツを読んでいると、「この曲は1954年にR&Bチャートでベスト5に、、、、、。」とあり、そこに書かれていた名前がMuddy Watersだった。
さぞや原曲もすごいことになっているに違いない!と勝手な期待に胸ふくらませ、レンタルレコードショップ(当時はまだCDはなかったので、LPレコードを貸してくれるお店が普通だった)に足を運んだ。「The Best Of Muddy Waters」を借りて、家に帰り、1曲目に収録されていた「I Just Want To Make Love To You」に針を落とすと、聴こえてきたのは思いもしていなかった音楽だった。「えぇー!なにこれ?」っていうくらい、The Rolling Stonesのカヴァーとは対照的で、全く好きになれなかった。The Rolling Stonesの超攻撃的でスピード感バリバリなアレンジに対し、Muddy Watersの原曲は、かなりゆったりとしていて、メチャメチャ渋いアレンジ。今聴くと、もちろんカッコイイのだが、その「渋さ」は当時の血気盛んなオレには楽しめるはずもなく、「ブルース」という音楽へ目に見えない壁を作ってしまう。
-The Best Of Muddy Waters-
この妖しく浮かび上がるMuddy Watersの顔!The Rolling Stonesのバンド名にもなった「Rollin' Stone」、名曲「I Can't Be Satisfied」、「I'm Ready」など、Chess時代の代表曲がギュっと詰まっている。まぁ、ベストなんで当然と言えば当然か。現在はボーナストラックが追加されたものが発売されている。
そんな、若造だったオレも20才年をとって、今またMuddy Watersを聴いている。しゃべるように歌い、話すようにギターを弾いているMuddy Waters。いや、歌うようにしゃべってるのかなぁ。とてもかっこいい。また、Muddy Watersのバンドがすごいんだ!何十年も前に録音された音楽に、こんなにもワクワクしたりドキドキするのは、やっぱりそこに音楽の原点があるからだと思う。そう思ってMuddy Watersを聴いているとなんだか嬉しくなってくる!
-Muddy Waters At Newport-
まず、レコードジャケットがカッコイイ!20才の頃に買ったと思うのだが、当時、このレコードを買った理由は「I've Got My Mojo Workin'」が入っていたからだった。ジャケットに書いている通り、1960年のNewport Jazz Festivalでのライヴ録音なんだが、歌と演奏がすごすぎて、もう、本当に脱帽だ。
「Keep Goin' On!」
生前、Muddy Watersがよくいってた言葉だそうだ。
「やりつづけろ!」
くぅー、ありがとう、マディ!
これもブルース。
追記:連載当初、ブルースマンのイラストを描き出したのは、この回が最初だった。イラストの感じが他の回とかなり違っているのはそのため。当時、このMuddy Watersを描き終え(たしか、5分くらいで描いたと思う)、近くにいたジョン・B・チョッパー氏に見せるも、「全然似てへんで」と言われたのがきっかけで、次の回から真剣に描くようになった。「似てる」「似てない」は別として、このときのジョン・B・チョッパー氏の一言は「真剣さが足りないんじゃない」と言いたかったのではと、いまになって思う。真剣にイラストを描いていないのを見透かされていたと言うか、、、。 この一言はとても有り難かった。 何事も「真剣」に取り組めば取り組むほど、楽しさはどんどん増えていくからね!
連載1回目のElmore Jamesと2回目のThe Rolling Stonesは当然ながらイラストがなかったので新たにというか、やっとこさ描いたといった感じ。転載ができてなかったらきっと描いていなかったと思う。そのうち、このMuddy Watersのイラストも「真剣」に描き直して、こっそり変わっているかもしれない。
初掲載:2007.11.16.
加筆・訂正:2010.07.09.
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